新入社員(5)
3月 7th, 2010
今の社会人1年生に、初々しさはともかく、一端の社会人らしさを身につけてもらうためには何が必要なのか?これまで当たり前とされている新人研修が、今の世代に適しているのかどうか?「研修とは」如何に早くレベルの高い仕事をさせられるか?が、目的であると思う。では、どのスキルを自分のものにできれば、成長の一歩を踏み出せるのか?新人研修の目的に焦点を当て、考えてみたい。
ある先生の言葉を借りると、昔の、鉢巻を締めて号令をかけるような上司の下では、今の人は育たない、と言う。今の世代に共通するのは、「他人に干渉されたくない」という考え方が当たり前だと言う。そういう人たちに、熱弁を繰り広げ、勢いと気迫をモットーとする形の研修は、逆に「しらけ」の対象でしかない。勿論、前述の研修がダメだとは思わない。少なくとも、生涯アナログを自認する私個人は大好きな研修手法である。またある場面において、今の若い世代を表現する中に、昔は上司に誘われると何はさておき付いて行き、酒を飲み飲み熱いトークを繰り広げる…そんな光景が当たり前だったのが、今は、上司から誘われたときの断り文句を用意しているらしい。これぞまさしく他人に干渉されたくないと言うことかもしれない。昔から受け継がれてきた、仕事をする上で必要不可欠だと言われてきた、「飲みにケーション」もその姿を変えてきている。またまた個人的には寂しいことだと思う。
さて、話を元に戻すと、他人に干渉されたくない症候群、しかも、実績は無いが、意味の無い自信を持っている彼ら。これまでの学生から社会人への変貌を期待するとき、何を研修の骨子と考えるか…。私自身が研修時に大切にしていることを述べたいと思う。あくまでも、私個人の見解であることを承知してもらいたい。…と思います…。
1. 彼らを、何も知らないと決め付け、頭から絶対に馬鹿にしない
2. 厳しい内容の部分があっても、機嫌はとらない
3. 今からは全く未知の世界の勉強が始まるということの認識
4. 知らないことを知るのだから、劇的に変われる可能性への期待
5. 「分かる」ということは、「変わる」ということの絶対認識
6. 仕事人としてではなく、人間としての魅力を持つことへの興味
7. 常識力の指導
以上、7項目を研修準備として、把握・認識をさせる。その後、具体的な人間としての常識、社内常識、社会常識、企業常識など、場面場面においての常識を頭で理解してもらい、実践していく。勿論、根幹であるモチベーションのアップや持続、向上心の意識アップ、動機付け、一種の楽しさ、ゲーム性なども必要であるが、これは研修担当者のレベルもあれば、手法も様々であるため割愛する。
要は、これまでの常識では通用しないと言うことを、完全に理解させ、新しい常識の引き出し(彼らの得意な勉強に置き換え、新しい方程式を覚えるようなもの)を作っていく作業を先ずは始めなければならない。研修時に邪魔になる陳腐な自信やプライドは、これまでの経験の上に成り立つものであって、これから実践しようとすることは、経験の無い、未知の世界のものだと置き換えさせることによる、スムーズな習得の準備が必要であると思う。そして、絶対必要な目標や夢を持たせることにより、当事者意識を持った内容の濃い研修を実施するべきであると思う。
とはいえ、中堅もベテランも経営陣も、成長に絶対必要なものは、現状を否定する能力とか勇気とか…それなくして成長は無い。繰り返しになるが、「成長とは、現状を否定し、新しいことへのチャレンジから始まる」という当たり前のことを再認識する必要は大いにあると思う。
詰まるところ…、新人を指導する、人を指導するまえに、私たち社会人の先輩と呼ばれる側の人間が、指導できる準備を持たずして、人の育成などは成しえないことだと思う。
新人や部下が、先輩や上司を見て、「ああはなりたくない」。そう思われないような、心構えが私たちにも必要なことは間違いない。…私も頑張ります!
井若 浩
カテゴリー: 経営相談